自己破産をすると、どんなに多額の借金があっても、税金などの一部の債務をのぞいて0にしてもらうことができるので、とても効果的に借金問題を解決することができます。
ただ、一般的に、浪費やギャンブルをしていたら自己破産できないというイメージがありますが、買い物やパチンコ、競馬などをしていたら、一切自己破産が認められないのでしょうか?今回は、浪費やギャンブルがあっても自己破産する方法について、解説します。

自己破産の最終目標は「免責」

世間一般において、浪費やギャンブルをしていると、自己破産ができないと思われていますが、これは本当なのでしょうか?
このことは、自己破産の「免責」という制度と関係があります。
一般的に、自己破産をすると借金がなくなる、と思われていますが、実はこの理解は少し不正確です。
自己破産をして借金がなくなるのは、「免責」という決定の効果によります。
免責とは、債務の支払い義務を無くしてもらえる決定のことです。自己破産をすると、破産の手続きがすべて終了した後、裁判官が「免責」の決定をしてくれるので、これによって借金が帳消しになるのです。
破産自身は、単なる財産と負債の清算の手続きなので、これによって借金がなくなるわけではありません。
そこで、自己破産をするときの最終目的は、「免責」です。自己破産をしても、「免責」が認められなければ、借金が残ってしまうので、自己破産する意味はありません。

自己破産の免責不許可事由とは

それでは、自己破産をすると、必ず免責が認められるものなのでしょうか?
答えはNOです。自己破産をしても、「免責不許可事由」がある人は、免責を認めてもらうことができません。
免責不許可事由とは、免責を認めてもらえなくなる事情のことです。
免責不許可事由にはいろいろな種類があり、たとえば一部の債権者を特別扱いする「偏頗弁済」をしたり、「財産隠し」をしたりすると、免責が認められなくなるおそれがあります。
そして、浪費やギャンブルも、免責不許可事由の1つとなっているので、これらの事情があると、免責が認められないことがあるのです。

どんな行為が免責不許可事由になるのか?

次に、具体的に、どのような行為が免責不許可事由に該当するのか、見てみましょう。
たとえば、買い物依存症になって不相応にショッピングを繰り返していた場合や、友人付き合いのために収入に応じない高額な出費をしていた場合、給料が少ないのに家族旅行を繰り返していた場合には浪費とみなされます。特に高額なものを買っていなくても、クレジットカードを不相応に多く使っていたら浪費の疑いをかけられてしまうこともあります。
また、パチンコやパチスロ、競馬や競輪、競艇などはギャンブルですし、宝くじもギャンブル的な行為とみなされます。
さらに、株式や先物取引などの信用取引をしていた場合にも、免責不許可事由に該当します。
このようなことは、一般の人でも、意識せず普通に行っているものなので注意が必要です。

裁量免責とは

それでは、免責不許可事由があると、どうしても免責を受けることが出来ないのでしょうか?
実は、そのようなことはありません。
自己破産には、「裁量免責」という制度があるためです。裁量免責とは、たとえ免責不許可事由があっても、裁判官の裁量によって免責を認めることができるというものです。
そこで、浪費やギャンブルがあっても、裁判官が「免責をさせてもいい」と判断してくれたら、免責を受けて借金を0にすることができます。
裁判官が裁量免責を認めるかどうかの判断をするときには、以下のような内容を考慮します。

  • 何回目の破産か
    破産を繰り返していると、裁量免責をしてもらうことは難しくなります。特に、前回も浪費ギャンブルによる破産で、2回目も同じだと、免責を受けられる可能性は非常に低くなります。
  • 浪費やギャンブルに使った金額
    浪費やギャンブルに使った金額が小さい場合、裁量免責をしてもらいやすいです。この場合に問題になるのは、借金全額に対する浪費やギャンブルに使った金額の比率です。
  • 浪費やギャンブルの期間
    浪費やギャンブルを行っていた期間が短ければ、裁量免責を認めてもらいやすいです。1回や2回、1ヶ月などという場合、ほとんどのケースで裁量免責が認められます。
  • 今はやめているか
    過去に浪費やギャンブルをしていても、今辞めていたら裁量免責してもらいやすいです。反対に、今でも続けているとなると、かなり問題視されてしまいます。
  • 反省しているか
    債務者の反省も非常に重要です。なぜそのような行為に及んだのか、そのことについてどう思っているか、今後どのようなことに注意して生活をしていくつもりなのかをしっかり考えるべきです。裁判所によっては、債務者に反省文を書かせることもありますし、免責審尋を行って債務者に厳しく質問をすることもあります。浪費やギャンブルの程度が酷いケースでは、破産管財人が選任されて、管財人から免責についての調査をされることもあります。ただ、概して言うと、1回目の破産の場合には、ほとんどのケースで裁量免責が認められるので、さほど構える必要はありません。

以上のように、浪費やギャンブルがあっても自己破産によって借金をなくしてもらうことは可能です。今借金問題で困っているなら、まずは弁護士に相談してみましょう。