借金返済で首が回らなくなってしまったら、追い詰められる前に債務整理をして解決すべきです。ただ、債務整理をすると、財産がなくなってしまうイメージがあります。
特に、車を持っているとき、債務整理によって手放さなければならないとすると、生活への影響も大きいので問題です。
そこで今回は、債務整理をすると車がなくなるのかどうか、解説します。
目次
車のローンがついていない場合
債務整理をすることによって車がなくなるかどうかについては、車にローンが残っているかどうかで大きく異なります。
まず、車にローンがついていない場合には、車がなくなるケースは少ないです。
問題になるのは自己破産をしたときで、この場合にはローンがなくても車がなくなる可能性があります。
自己破産をするとき、債務者に一定以上の価値の財産があると、その財産は現金に換えられて、債権者に配当されてしまうためです。
車の場合、時価による評価額が20万円を超えると、売却と配当の対象になります。
ただ、車は、ときの経過による価値の目減りが非常に早い資産です。たとえば、新車価格が300万円、新車登録時から7年が経過していたら、評価の必要もなく、車を手元に残すことができます。
自己破産によって車がなくなるケースは、そう多くはありません。
車のローンが残っている場合
次に、車のローンが残っている場合にどうなるのかを見てみましょう。この場合、債務整理によって車がなくなる可能性がかなり高くなってしまいます。
所有権留保とは
債務整理によって車がなくなる理由には、所有権留保という法的な手続きが大きく関係しています。
所有権留保とは、車のローンを完済するまでの間、車の所有名義人をローン会社にとどめておくことです。このことにより、債務者がローン返済を滞納すると、ローン会社が所有権にもとづいて車を回収して、売却することができます。売却したお金は、残ローンの返済に充てられます。このように、所有権留保は、不動産の抵当権に似た担保権の1種です。
所有権留保がついている場合、債務者が借金返済を滞納すると、ローン会社が車を回収してしまうので、債務者は車を失うことになります。
任意整理、特定調停の場合
それでは、車のローンがついている場合に債務整理をすると、車はなくなるのでしょうか?
これについては、債務整理の手続きによっても異なるので、以下で見てみましょう。
まずは、任意整理や特定調停のケースです。
これらの手続きでは、債務者が、対象にする債権者を自由に選ぶことができます。
そこで、車のローン債権者を債務整理の対象にしなければ、担保権を実行されることがなく、車がなくなることはありません。
その場合、債務者は車のローンだけは今まで通り支払いを続け、その他の借金を債務整理によって減額してもらうことになります。
個人再生、自己破産の場合
個人再生や自己破産の場合には、車を手元に残すことができるのでしょうか?
この場合には、難しくなります。
任意整理などのケースと異なり、個人再生や自己破産では、債権者平等の原則という原則が適用されます。これは、すべての債権者を平等に取り扱わなければならないという決まりです。
自己破産や個人再生で、一部の債権者のみを特別扱いすると、自己破産では免責が認められなくなって借金の免除を受けられなくなるおそれがあります。
個人再生の場合には、一部の債権者に支払った金額を上乗せして、全債権者に対する返済をしなければならないので、返済金額が上がってしまいます。もちろん、裁判所にバレた後は、その一部の債権者への支払いを継続することは認められません。
そこで、個人再生や自己破産の場合、車のローンだけを特別扱いすることはできないのです。
よって、車のローンが残っている場合、そのローンも自己破産や個人再生の対象になって、免除や減額の効果が及びます。
すると、ローン会社は、所有権留保にもとづいて、車を回収して売却してしまうので、自己破産や個人再生をすると、車は手元から失われることになります。
個人再生で車を守ることができる別除権協定とは?
個人再生をすると、ローン付きの車は基本的になくなりますが、例外的に失わずに済ませられるケースがあります。それは、別除権協定を利用できるケースです。
別除権協定とは、ローン会社との間でローン支払いについての協定を締結し、それを裁判所に認めてもらうことによってローン支払いを継続できる方法です。
別除権協定が認められたら、協定通り車のローンを支払うことが認められますし、支払をしている限りはローン会社から車を回収されるおそれはありません。
ただし、これはどのような場合でも認められるわけではありません。個人タクシーや個人の運送業など、車が生活維持のために必需品となっているケースでのみ、裁判所の許可を受けて例外的に認められるものです。単に便利だからとか、通勤に使っているからなどの理由では認めてもらうことができないので、注意しましょう。
以上のように、ローン付きの車がある場合に自己破産や個人再生をした場合や、高額な車があるときに自己破産した場合には基本的に車がなくなりますが、それ以外のケースでは通常車はなくなりません。
車があっても心配しすぎる必要はないので、借金があるなら早めに債務整理をしましょう。